80mm

日々、意味>新 2017.10.16 加藤 孝司

ここにある白い塊は湯呑みである。大きさは直径80mm,高さもちょうど80mmである。テーブルに置いた時のバランスは、上方から見ると円筒形であり、真横から見ると奥行きのある正方形にみえる。なんとも安定感のあるバランスだ。つやつやした表面は硬質な磁器そのものだ。手にしたときの安心感も申し分ない。内側は底に向かってゆるやかにカーブしている。円筒形の中に曲面がある。内側の形状からみて察することができるように、この湯呑の最大の特徴は中空になった構造だ。この中空のお陰で、熱いお茶を淹れても、中は熱いのに外は持つのにちょうどよい温かさだ。この作り方はとても難しいのだという。スタッキングはできない。その潔さもいい。そしてデザイナー個人がディストリビュータ的な存在も兼ねているため、一回の生産数も極めて少ない。いま、このサイトでほぼ独占的に販売している。デザイナー自らがfacebookなどでつぶやくと、しばらくしてすぐにソールド・アウトになる。そしてまたしばらくすると入荷のご連絡がある。需要と供給のバランスがちょうどいい。いまどき珍しい商品である。なんといってもシンプルなデザインがいい。シンプルだが、そっけないということもない。その余白になにかツッコミをいれたくなる。白い器は和にも洋にも合う。湯呑みだが、たまにコーヒーや日本酒をいれて呑んでみたくなる。うちでも夫婦で2つ使っている。これをデザインしたのはデザイナーの秋田道夫さんである。

加藤 孝司
加藤 孝司
加藤孝司/かとう たかし
デザインジャーナリスト。東京は浅草生まれ。デザイン、クラフト、アートなどを横断的に探求、執筆。雑誌やウェブなどへの寄稿をはじめ、2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考中。休日は愛猫ジャスパーと過ごすことを楽しみとしている。

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