美しい空港

日々、意味>新 2017.11.20 水島 七恵

ドイツ・フランクフルト空港でトランジット。空港に降り立った瞬間に私の目を奪ったのは、ゴミ箱でした。ゴミ箱を被写体にカメラのシャッターを切る私の姿は、ちょっと異様だったかもしれません。実際、周りの人はどこか怪訝な顔をしながら私の横を通り過ぎて行きましたが、ときめく気持ちを抑えられない私は、トイレのマーク、搭乗口案内、時計、果ては天井まで….空港のサインを見つけては、シャッターを切り続けていました。
さすがは、ドイツ。デザインとして極まっている。私にとって空港のサインは、美しい被写体だったのです。

 無駄がなくシンプル、機能美に極まりながら、飽きがこない、そして使いやすいデザイン。そんなドイツのモダンデザインの原点は、1919年に開校した芸術・建築総合学校バウハウスにはじまっていることは有名な話です。

 

「全ての造形的作業の最終目標は建築である!
建築家、彫刻家、画家、我々は皆、手工業に立ち返らなければならない。
芸術家は職人の延長上にある」

バウハウス・マニフェストより

ドイツ語で「建築の家」の意味を持つバウハウスは、アート(芸術)とクラフト(工芸)の統合を目指しながら、建築だけではなく家具、舞台、広告やタイポグラフィなど、すべての可能性に挑戦しました。1933年にナチス政権下で閉校に追い込まれたものの、今もその思想は色褪せることなく、さまざまなデザイナーや芸術家に影響を与え続けています。

 


BMW、メルセデスベンツ、ポルシェ、プーマ、アディダス、ブラウン、ライカ、ステッドラー、リモワなど。世界に誇る「ドイツ産」を見渡してみてもバウハウスの息吹を感じてしまいますが、その最たるもののひとつが、ドイツと世界を繋ぐ入り口である空港にあらわれていたと、私は深く感激したのでした。学校という形は消滅しても、バウハウスの意思は奪えなかった。そして日々、世界中の人々の人生を運んでいるのだと。

 

 

水島 七恵
水島 七恵
編集者。新潟生まれ。人の営みから生まれる文化全般を思考領域としながら、雑誌やウェブメディアを中心に、企画とディレクション、執筆を行う。最近の仕事に「TOKYO PAPER for Culture」(vol.01〜vol.16)の編集ディレクションと執筆、雑誌「リンネル」(毎月20日発売)でのシネマレビュー執筆などがある。自分の原点は、音楽。最近目覚めたことは、筋トレ。私にとって編集とは世界の見かたを増やす手段だと思っています。

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