どこから照らすか

日々、意味>新 2017.11.29 橋本 司

この季節になると必然的に落ち葉がふえて掃除が大変になるんですけど、「めんどくさいなぁ」という気持ちと一緒に「おもひでぽろぽろ」を思い出します。あるシーンで「都会の人は田舎を『自然がいっぱいでいいね』なんていうけど、田舎の景色は人の手で作られてる。大変なことも含めて自然からいろんなものをもらえるから、共存するためにずっと昔から人が考えながら手を入れて作ってきたものだ」っていうようなセリフがあるんですけど、これを思うとふだん借景で楽しませてもらってる分、いただいてる分はお返ししないとなぁと思えて「めんどくさい」がちょっと小さくなってくれます。

 

本や映画はストーリーがおもしろいものもあれば、こんな風にピンポイントで覚えてて好きなものもあります。大学生の頃、自分のあまりの凡人さ加減に先行きが不安になってたんですけど、「鉄コン筋クリート」で「灰皿の場所一つとってもそこに『たかが』はない。理想が明確なほど細かい事はなくなる」的なセリフがあって、その頃はプロには人より秀でた才能が必ずあるものだと思ってたんですけど、小さなことを見逃さず気付けることもまたプロなんだなぁと思えて、それなら自分にも何かできることがあるのかもしれないと救われたものでした。

 

作り手の意図とは違うかもしれないけど、こんな風に作品を好きになることがあって、道具も本来の用途とはまた違ったところで活きることがあります。FAIR TRADE ORIGINALのタンブラーは、技術力を必要としないようにあえて分厚く作られているんですが、正直分厚すぎて本来のタンブラーとしては使いたいと思えませんでした。でも、その分厚さ故にカトラリーやツールスタンドとして使うにはどっしりと安定感があってちょうどいい。どの角度から光を当てるかで、違った良さが見えることもあるんですね。これからも身の回りの「たかが」を見落とさないようにもっと観察していきたいと思います。

 

FAIR TRADE ORIGINAL / FAT crockery : PIET HEIN EEK