デザインの辺境。「辺境展」によせて。

日々、意味>新 2018.01.27 加藤 孝司

デザインにまつわる良質な展示を連発している文京区小石川の「デザイン小石川」。先週末から始まった「辺境展」は、7名のデザイナー、写真家が参加した展示で、デザインやいまの時代を生きるということを考える上でとても興味深いものだった。

まずタイトル。辺境とは文字通り、中心ではない場所のこと。辺境は辺鄙(へんぴ)とも言い換えることができる言葉かもしれないが、そこにはどこか辺境であるがゆえの不自由な感じもある。辺境というタイトルをデザインの用途という点に置き換えれば、それは用途を限定しないもの、不便な、とも受け取ることができる。そんな「辺境」という日常ではあまり使うことがない言葉を展覧会のタイトルに選ぶその選び方もユニークだ。

展示されているのは、棚やテーブル、器、軽石のオブジェ、ポストや金属のレールなど。無造作にコンクリの床に置かれている様は、この場所自体が辺境であることもイメージさせる。

いずれもカタチや思考の上でソリッドな佇まいをもち、モノトーンで統一されている。壁に展示されている写真と赤いポストのみが、この世界にある色を表しているかのようだ。
土、鉄、紙、化学素材など、マテリアルもさまざま。だが全体をひいてみると、不思議と統一感もある。デザインという観点からみれば、いずれも使ってみたいと思わせてくれるものが多い。

あえて「辺境」と名付けられていることには、「デザイン」というものが置かれているニッチな立ち位置、そんなシニカルな姿勢とも受け止めることができる。だが、これを無視することこそが辺境の思考であることも想像させる。これらをみてどう思うか、そんなことも試されている。

 

「辺境展」デザイン小石川。2017年1月28日(日)まで開催中。