イ・ランという人

日々、意味>新 2018.03.25 水島 七恵

10代という名の自意識過剰な時期に摂取したカルチャーは、大人になった今も効果絶大で、特に音楽に関してはその当時聴いていた作品が今の自分のアイデンティティを土台を形成しています。不思議なもので音楽というカルチャーはある一定の年齢を超えると、映画やアート、デザインといった他のカルチャーに比べて、鮮度の高いものを求めなくなりました(私の場合)。一般的なヒットチャートを賑わす音楽には全くついていけなくなるし、例えそれがインディーズだとしても、新しい才能に過敏に反応することもなくなります。それよりも、自分と同時代を過ごしてきた楽曲を改めて再解釈しては楽しみ、または少し上の世代の、人生の先輩たちの楽曲が沁み入るようになるのです。映画やアート、デザインは常に「今、ここ」の時代を作る新しい作品を体感したくなるのに。(もちろん、新しいものだけではありませんが)
そんな私が久しぶりに音楽で、これからの時代に(自分に)必要だと実感できるアーティストに出会いました。韓国のアーティスト、イ・ラン(Lang Lee)。86年、ソウル生まれ。ミュージシャンであると同時に映像作家であり、コミック作家であり、文筆家でもあるイ・ランは、「神様ごっこ」が日本でもリリースされた頃から、より多くの人々に注目されるようになっていました。
私もそのひとりであり、イ・ランのものの見方、そこから立ち上がってくる言葉、顔立ちに惹かれ、さらに声を聴いてグッと惹き寄せられたのです。それは同時に韓国の社会背景や営みも知りたいという欲求にも変わっていきました。
そして先日、友人たちと大人の遠足気分でイ・ランのライブを観るべく那須へ向かったのですが、イ・ラン、全ての予想をはるかに超える素敵さでした。立ち振る舞いの全てがハンサムで美しい。個人的に音源の100倍、魅了されるライブでした。心震えながら、私はグッズ売り場でオーディオブック作品「神様ごっこ」(写真上)を購入。「神様ごっこ」は彼女の抱える葛藤や不安、日々の疑問を綴った長編エッセイと新曲10 曲を組み合わせたオーディオブック作品です。
売り場にはイ・ラン本人が立っていました。せっかくならば、とサインをいただいたところ、彼女が私の名前とともに韓国の言葉で書いてくれた一言があります。

「よく生きて」。

 

今も大切に携えています。