SINA SUIEN、有本ゆみ子さんを知っていますか。

日々、意味>新 2018.05.24 加藤 孝司

SHINA SUIEN 秋冬衣服発表会「こしょろがみた夢」を、隅田川に近い浅草橋に出来たばかりの新しいギャラリー、CPKギャラリーでみてきた。SHINA SUIENは刺繍作家である有本ゆみ子さん手がけるブランド。世界各国の生地をカスタムしてつくられるコレクションはそのテキスタイルのように無国籍。服というよりも伝統的な衣(ころも)というべき服からは、不思議な魅力が立ち上がってくる。

本作は大阪生まれの音楽家・映像作家のmamoruさんとのコラボ。コレクション自体もmamoruのリサーチ資料であるいにしえの手紙から着想されたものだ。その手紙とは鎖国時代の日本で、混血であるがゆえに島ながしにあった、女のコの話。乳母にあてた手紙には、生まれ育った日本を懐かしむ思いが綴られている。

そんなストーリーをもった有本さんのコレクションは色鮮やかな光沢のある布たちをパッチワークしたキルトのようなテキスタイル。ところどころに刺繍やプリントが施され、その衣はすべてあらかじめ彼女によって想定されたモデルのために手作業でつくられ、服にあわせて靴もデザインした。DMとなった写真は最近新作作品種を発表したばかりの写真家佐内正史さんが手がけた。

有本さんをはじめて知ったのは彼女が参加し出版された「色ちゃん」という本をみた2014年頃のことだろうか?既存のレディスブランドのファッションとは異なる西洋のものとも東洋のものとも、エスニックともオリエンタルともいえる服はちょっとした衝撃だった。

また刺繍作家としての彼女が手がける作品もアーティスティックな表情。さらに彼女が描く手描きのスワッチは、キラキラとした瞳が大きく描かれた、まるで少女漫画のよう。それもそのはず、誰もがそうであったように子供の頃からアニメに親しみ、彼女のインスタグラムでは今でもしばしばアニメが登場するほど少女性は重要なモチーフになっていることがうかがえる。先鋭的なファッションの表情とアニメを思わせる作品ドローイング。その二面性こそがSINA SUIENの作品の個性であり魅力なのであろう。