映画に躍動する

日々、意味>新 2018.12.28 水島 七恵

例えば本のページをめくるように自分のリズムで展開できない映画は、ある意味不便で、ときに退屈なもの。そのリスクを抱えながらも、それでも映画を観たくなるのは、自分の生きてきた道と答え合わせをしたくなるからかもしれません。何より素晴らしい映画は答えではなく、問いを与えてくれます。そんな映画に今年も、そして来年も出合いたい。2018年観た作品のなかから、ぜひおすすめしたい映画を3作品お届けします。

 

1.「生きてるだけで、愛。」(監督:関根光才 出演:趣里、菅田将暉、田中哲司、西田尚美 / 松重豊 / 石橋静河、織田梨沙 / 仲 里依紗ほか)

映画とはそもそも虚構のもの。でもその虚構を、現実のものとして私たち鑑賞者に提示できるその手腕の持ち主こそ、素晴らしい作り手だと思うのですが、まさに「生きてるだけで、愛。」では、冒頭のシーンからエンドロールまで「事実あったこと」として、一瞬も気持ちが冷めることなく観ることができました。関根光才監督が、「この映画の裏テーマは、世の中におかしくない人間はいないということでした」と述べていますが、私自身、この監督の想いを受け止めながら、自分も含めた人間の滑稽さと危うい生命感を、少しだけやさしく認めることができたような気がします。見慣れたいつもの風景が、違った角度から迫ってくる作品です。

 

2.「君の名前で僕を呼んで」(監督:ルカ・ グァダニーノ 出演:ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマーほか)

17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)と24歳のオリヴァー(アーミー・ハーマー) の男同士の恋の躍動を、まばゆい夏の光の中で描いた本作。牧歌的な自然のなかで、日光浴をしながらプールで遊び、芸術を語り、その土地の旬なものを食べて過ごす。ふたりの夏のひとときすべてが、息をのむほどに官能的です。理性から解き放たれた人間の野性を、これほど品良く、美しく描いた作品に、久しぶりに直面しました。物語の終盤。エリオとオリヴァーの全てを包み込むエリオの父、パールマンの言葉は、一語一句、そのまま観る者全ての人生のメッセージになります。 そして本作の挿入歌を手がけたスフィアン・スティーヴンスの音楽!心に残る映画は、必ず音楽が等価に寄り添っていることを改めて実感します。

 

3.「タリーと私の秘密の時間」(監督:ジェイソン・ライトマン 出演:シャーリーズ・セロン、マッケンジー・デイビスほか)

自分だけのために生きていた時代が懐かしい。その時代にさよならして望んで手にした幸せ。なのにその幸せな日々のなかにも、容赦ない残酷な瞬間はある。親であること、妻であること、女であることの正義にだって、人はときに追い込まれていくもの。今を生きるすべての女性たちの奮闘と孤独と葛藤を、シャーリーズ・セロン演じるタリーが体現してくれています。そう、この映画のすべてのシーンとセリフをリアルなものとして成立させているのは、何よりもシャーリーズ・セロンの役者としてのプロ根性だと思っています。なぜならシャーリーズは、その美しくしなやかな肉体に、溢れるほどの台詞を詰め込んできた優れた役者だから。役に合わせて体重の増減はもちろんのこと、顔つきまで変えてくるシャーリーズは、「タリーと私の秘密の時間」でもたっぷりと脂肪のついたお腹とお尻を揺らしながら、心身ともに疲れきった3人の子供を持つ中年の主婦、タリーを見事に体現しています。このシャーリーズ演じるタリーそのものが私のお気に入りです。

 

2018年から2019年へ。来年もどうぞよろしくお願いします。

 

 

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