ゲーム・オブ・スローンズと私。

日々、意味>新 2019.06.24 水島 七恵

多様性が叫ばれるこの時代ですが、そもそも「多様性」とは何を指すのでしょうか。

性別、国籍、年代などの人の外面的なことを指すこともあれば、アイデアや価値、働き方といった内面的なことを指すこともある。そして、ひとりひとり違う価値観や考え方を持つ人たちと共存する社会、それこそがダイバーシティ(多様性)。ということでしょうか。

 

最近、この多様性について改めて考える機会がありました。それは人気の海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」を通じて。ジョージ・R・R・マーティンの小説『氷と炎の歌』を原作に、HBOがドラマ化した「ゲーム・オブ・スローンズ」は、架空の王国を舞台に、複数の名家が繰り広げる壮絶な覇権争いを描いたファンタジードラマです。

そのあらすじも作品もネット上で鑑賞できる手段はさまざまあるので、ぜひご興味ある方はのぞいてみてもらえればと思うのですが、兎にも角にも登場人物の多様性はもちろんのこと、その一人一人の内面に抱えた多様性に振り回されていきます。本作の登場人物は誰もが善人であり悪人でもあって、一見、敵味方も分かれているようで、個々に抱えた想いはそれぞれ。すべてをわかり合えるということはない。ゆえにひとつとして予想通りの展開など生まれず、世界はつねに悲喜こもごものグラデーションで染まっていることを痛切に描いています。

それを見ながら多様性とは、そもそも一人の人間のなかにある、異なるさまざまな傾向のことを指すのだと、強く実感したのでした。

振り返ってみると、私自身、自分の中にある多様性によって予期せぬ人生の扉が開いたり、忘れられない出会いをたくさんしてきました。と同時にその多様性によって、ときに自分で自分に混乱し、振り回され、人生を見失ってしまったこともたくさんあります。

私はこういう人間である。

こう断定できれば楽ですが、人間はそもそも複雑で、白黒はっきりつけられる生き物ではないということ。他者との関わりによってつねに自分の中の答えも変わっていくということ。その複雑さをグツグツと煮えたぎらせながら、つねにその内側に抱えた善悪の真ん中に立って、日々限りなく善を目指すしかない。それはとても苦しくて孤独な作業であるけれど、でもその繰り返しこそが生きるということを、「ゲーム・オブ・スローンズ」を通じて(勝手に)実感する、今日この頃です。