過剰な反復の先に

日々、意味>新 2019.06.28 橋本 司

テクノ・クラシックと呼ばれる曲の中に、BASIC CHANNELの「PHYLYPS TRAK II」という曲があります。BASIC CHANNELは、MORITZ VON OSWALD率いるベルリンのアンダーグラウンドユニット/レーベルで、テクノ史的には避けては通れないとても重要な存在で、この他にも優れた作品を多数リリースしています。とりわけこの曲は、94年リリースにも関わらず、今でも多くのDJにプレイされる名曲中の名曲。未聴の方はぜひこちらででも聴いてみていただきたいです。

 

スキップして掻い摘んで聴いてもらうとわかりますけど、約13分あるけど最初から最後まで何も起きません・笑。これと言った大きな変化もなく、執拗にずっと同じリズムが繰り返されます。ただ、さっきはスキップしてって言いましたけど、それだとこの曲の良さはわからないんです。飛ばさずにじっとりずっと聴いてると、過剰な反復の先にグルーヴが生まれてくるんです。ジャズで言うスウィング、マラソンで言うとランナーズハイって感じかな?

 

昔に比べて、人が読める文章の長さが短くなってきてると言われてますけど、「PHYLYPS TRAK II」の良さは3分ではわからないし、正直YouTubeじゃなくていいサウンドシステムじゃないと伝わりにくいと思います。こんな風にわかりやすさの中には生まれ得ない良さってのもやっぱりあるわけだから、難しいと感じた場合も、自分を鍛える意味でも投げずに少し向き合ってみると見えてくるものがあるのかもしれません。この曲の良さを感じるにも、まずは過剰な反復に耐えられるようにならないとダメですからね・笑。