70cmの景色とくらし
70cmと聞いてどんなことを考えるだろうか?子供のころから親しんでいる30cmのものさしの2倍強、1mにも少し足りない長さ。とっさにその距離感は掴めないかもしれない。
この時の70cmとは目線の高さのことである。日本人が慣れ親しんでいる床に座ったときの、平均点な目線の高さに相当する。
普段街を歩いているとよくわかるのだが、目線の高さはその人の街でのモノの見方を規定している。身長が2mmと1m60cmの人とでは、良い悪いは別として、身の前に広がっている世界は大きく異なっている。
くらし方だけでなく、働き方も多様化し、その選択肢が広がっている現代、インテリアももっと自由に、選択の幅が広がってもいい。
かつての日本人が当たり前のものとして慣れ親しんだ床に座わる生活では、仕事をする場所、食べる場所、寝る場所、遊ぶ場所はすべて床の上であった。
その生活では、茶ダンスのサイズや高さ、床の間に活けた花や掛け軸、襖や障子の取手の位置、テレビ台の高さが、床に座ることを前提に考えられていた。それは西洋的な椅子やソファ、靴を履いたままの生活のスケール=ものさしとは異なるものだろう。
床に座ったときの70cmの高さからみたときに、そこに広がる生活風景が心地良ければ生活の感覚も心地よくなるに違いない。
そんな「70cmのくらしから見える景色」を標榜するプロダクトがリリースされた。
正式発売に先立ち、Makuakeで先行発表された西尾健史さんの「時を生ける」と「KODAI」がその第一弾となるもの(Makuakeでは、プロダクトがいち早く入手できる、価格が通常の20%〜30%OFFで購入できる、というメリットがあるとか)。
茶碗や湯のみなどの底にある、テーブルに接するちょっとすぼまった部分を高台という。器を持つときの引っ掛かりになったり、重ねて収納しやすくしたり、釉薬をかける際に高台があると作業がしやすくなったりするのに必要な部分だ。
KODAIは器がもつそんな機能を拡張しながら、床の上でのくらしをすこし楽しくしてくれるユニークなツールである。
ソファなどを背に床に座っている時に、直に床にモノを置くのが気になるような場合にちょうどいいモノの置き場所が欲しいと思ったことはないだろうか?そんなときにちよっとくらしを整えてくれ、便利なのがこのKODAIだろう。
「時を生ける」は一見時計のような形をした花器のようなもの。そこに花や植物を生けることで完成する。忙しい毎日では、時間はせわしなく過ぎていくだけ。ちょっと立ち止まる心の余裕を持つだけで、生活のリズムが整い、新しい発見があるかもしれない。
花を生けなくても、床に座った時に心地よい高さの位置に壁に飾っておくだけで、空間の空気を変えてくれる。普段花を生ける習慣のない人にも使って欲しいプロダクトだ。
70cmは、私たち日本人にとって意味のあるものさしになるだろう。そんな視点に着目したこのプロジェクトに注目したい。
「70cm」Makuake