作為なくえらびかたちにするよろこび。
古本浩、「SCHOOL OF NPWーNPWの学校」曽田耕

日々、意味>新 2015.07.05 加藤 孝司

「SCHOOL OF NPWーNPWの学校」は、東京は浅草の靴職人である曽田耕氏が考案したバッグ「NPW365」をつくるワークショップ。
皮革産業において端切れは、製品をつくる上で必ず生じるもの。革製品に限らず、服作りであれ、時に料理であれ、端切れはやむをえないものとされている。それらは製品とともに日々大量に生産され、ほとんど利用されることもなく、ゴミとして廃棄されている現状がある。
NPWワークショップでは、それら不要になり廃棄される運命にあるものこそに光をあてる。それは不要と思われていたものを世界でたったひとつの愛おしいものに変換させるプロセスでもある。
革の端切れととんかちとカシメ、そして革を選び、打ち、かたちにするという、最低限の要素と手数だけでつくられるプロダクト。曽田氏が日々にものづくりに携わるなかで発明し、その哲学の深みに気づいた古本氏が誰でもが参加できるワークショップというかたちで展開するのが「SCHOOL OF NPWーNPWの学校」というわけだ。
現在古本氏は、広島周辺の革製品工場で廃棄される革を自らの足を使って手に入れ、NPW加工用に穴をあけ、その端切れの塊をスーツケースに詰め日本中をめぐっている。
捨てられる運命にあった革の端切れに新しい命を吹き込み、今日新たに出合う人たちのために。
パッチワークという技法がもたらすつくり手の自発的な偶然性と、バッグという立体の上での隣り合う革同士の一期一会の出会い。そしてつくり手のほんの少しの作為によって、NPWは曽田氏が考案した作法を継承しながら、同じもののひとつとしてない革新的なイメージを生み出していく。人間に消費されるものである皮=革の、その生成プロセスを考える上でもNPWは批評的であり、興味深い。