ラップ・ミュージアム

日々、意味>新 2017.10.28 野本 哲平

土曜日の21時55分、あと5分でTBSラジオ ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル が始まろうとしてる。(と思いきや、この時期お約束の日本シリーズで15分延長のようだ。)

およそ2ヶ月ほど遡るが、8月のとある夏の日に千葉県の市原湖畔美術館で2017年8月11日(祝)~9月24日(日)に開催されていた「ラップ・ミュージアム RAP MUSEUM」展に行ってきた。
この日は前日から大多喜薬草園の現場に入っていたので、せっかく近くまで来てるのだからと、午前中(自分に)半休をいただいて美術館を訪れた。

半日じゃ時間が足りないくらい内容が濃すぎたり、錚々たるMCたちのリリックノートを公開するコーナーのマミーD氏の展示スペースには「都合により、会期中に追加展示いたします。」というヒップなキャプションが掲げられてあったりと、再訪心をくすぐられる展示だったわけであるのだが、結局、会期中再び訪れることは叶わなかった。

写真もたくさん撮ったので、もっとアップしたいところなのだが、良くも悪くも当ダイアリーのシステム上、上限5枚という制限があるので、この展示の全貌をお伝えすることができなくて悔しい。

展示はいろんなコーナーに分かれているのだが、まずインテリアデザインという観点で見ると、サイプレス上野氏とKOHH氏のそれぞれの、部屋の再現をするコーナーは必見であった。
明日まで国立近代美術館で行われている「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」における、清家清先生設計の「斎藤助教授の家」の原寸での復元も素晴らしいのだが、前者はそれに勝るとも劣らない展示であった。
二人の部屋は、世代の差を如実に表す装置としても機能しているように感じた。物質をひたすら集めることで自己を表現してきた時代を過ごした僕と同年代のサ上氏の部屋は「わかるー」っていう(共感する)アイテムのオンパレードで、正面に貼ってある、スチャダラパーの「5th Wheel 2 The Coach」のポスターなんかは高一の春の発売当初に、高校の近くのレコード屋で同アルバムを購入時にノヴェルティでもらって僕も部屋に貼っていた。一方で、IT革命や物質主義の限界、断捨離などなど、形あるモノより、体験や情報を重要視するようになった時代に多感な時期を過ごし、リリックもiPhoneで書き溜めるスタイルのKOHH氏の部屋においては、(もちろんスタジオ部屋という理由も大きいが)ミニマルで、余計なものがなく、僕が以前から気になっていた現場を支えるネットストアモノタロウで売っている黒い合皮のOAチェアに酷似した椅子と、轆轤挽きの脚を持つテーブルが二台、正面の壁には先のポスターとは対照的に吸音材が貼られていた。すごくシンプルで製作に集中できそうな、ストイックでこちらも好印象な空間だ。

こちらも必見のリリック帳のコーナーとか、他にもあげたらきりがないのだけれども、日本に置けるRAPカルチャー周辺における黎明期のフライヤーなどの印刷物におけるエディトリアルデザインにはひどく感銘を受けた。
中でもMAJOR FORCE関係のフライヤーや、フリーペーパー YO NEW SKOOL NEWS などは、四半世紀が経過した現在においても非常に新鮮だった。

濃厚な束の間の半日がすぎて、薬草園に戻った僕は、薬草園で一番人通りが多く目につくであろう壁にHIP HOP最高会議のフライヤーを貼ってみた。

とか言っとく。