大江よう氏の仕事

日々、意味>新 2018.09.29 加藤 孝司

友人の熊谷くんがキュレーションをする渋谷のオルタナティブスペースaiiima2で、衣服に関する謎な研究を続ける大江よう氏の仕事をみた。

大江くんと初めて会ったのは、7年ほど前に僕らが主宰するイベント「何に着目すべきか?」の時だったと思う。大江くんをゲストに招いたのは何に着目すべきか?のメンバーの橋詰宗くんだった。当時から大江くんは衣服生物学研究所の所長代理という肩書きで、ファッションとアートを横断する活動を展開していたと思う。僕の認識ではファッションのテキスタイルに関するリサーチ活動を展開する人が大江くんだった。

そんな彼が最近立ち上げたのが「TEXT」という活動。彼は文筆活動を行っているし、ファッションの活動も行っている。文章=テキスト、そして布地=テキスタイル。その二つにまつわる活動がひとつに統合されたということか。

今回の展示というかオープンスタジオのタイトルは「ここにテキストが入ります。」。会場にはデザイナーや建築家、ミュージシャンや料理人などとのコラボレーションにより作られた、さまざまに手を加えられた布地が掛けられ、壁面にはこれまでの仕事のマテリアルが、仕様書、あるいはカルテのような紙に貼付けられたものが貼り出されていた。

そして中央には彼が近年行っているというシルクプリントの作業台。そこでは今まさにテキスタイルに施すプリントの下刷りが行われていた。

 

テキストとテキスタイルに共通するのは編むことなのかもしれない。言葉を編むとはよく言ったもので、テキストは書かれるテーマに添って言葉を選び文章に編む行為であり、テキスタイルは最終的に服やソファの張り地やカーテンなどになる布を作るために、無数の糸で編み上げる行為であり作業である。

書き手がもつ言葉のボキャブラリーが編み上げるテキストのセンスに繋がっている。また、テキスタイルも編み手や作り手のセンスによって多様なものが生まれる可能性をはらんでいる。まさにそこにあるのは「TEXT」の活動のもう一つの主題に掲げる「コンテキスト=文脈」の活用である

本展のタイトル、「ここにテキストが入ります。」とは、編集におけるダミーのテキストを意味する。それ自体にはまだ何も意味がない。まさにこれはテキストとテキスタイルがもつ可能性、その匿名性、あるいはテキストとテキスタイルがもつ余白そのものを示しているように僕は思う。書かれるテキストも編まれるテキスタイルも、それを編まれること=コンテキストを待っており、その意味においてそれらは余白そのものから始まる。TEXTの活動もまた、無形のものからスタートして、他者との関わりの中から徐々に有形なものへと変容していく。そんな大江くんの脳内のプロセスの片鱗をこのオープンスタジオではみることができる。

 

TEXT

open studio exhibition

004

2018年9月24日~9月30日

at aiiima 2