実用性を兼ね備えた美

日々、意味>新 2019.05.31 加藤 孝司

ウィルヘルム・ワーゲンフェルドは1923年から3年間バウハウス・デッサウ校に於いてモホリ・ナギのもと金属工房に学んだ。当時の学長はW・グロピウス。同時期に同工房に於いて学んだ学生の中にはのちに金属工房において主任を務めることになるマリアンネ・ブラントがいる。ブラントは実験的な写真作品に加え、ティーポットや灰皿などの作者として知られているが、そのうちのいくつかは現在もイタリアのアレッシイ社に於いて復刻生産されている(ブラントはバウハウスの金属工房に在籍していた弟子のヒン・ブレンダンディークと金属製のデスクランプも手がけた)。
ワーゲンフェルドはバウハウスで学んだのち、イエナ・ガラス(ショット&ゲン)工房に在籍し数々の日常生活に根ざした日用品をデザイン・開発した。
1938年に発表された透明なガラスの四角い明確なフォルムのKUBUSシリーズ(Vereinigte Lausitzer Glaswerke AG.WeiBwasser)はバウハウスの残した遺産の中でも重要な作品のひとつとして知られている。
成型ガラスながら大きさに7つのバリエーションがあり、単品で購入することができるうえ、本体と蓋が別々に購入出来るという当時としてはすべてが画期的な日常収納食器具であった。
その用途は単体で食品保存、ケースのままで料理を食卓にサーブ出来るという実用性と明晰な美しさを兼ね備え、蓋は食卓では取り皿としてと、その用途は現代でも十分に機能する。
さらにこのKUBUSシリーズが優れている点は、それぞれ大きさの異なるケースを重ね合わせると一つのアート・ピース(建築物)となることである。それはましくバウハウス創設者W・グロピウスのバウハウス宣言の冒頭の言葉、{すべての造形活動の最終目標は建築(バウ)である!}という言葉を体現しているようである。