麺の端をなんと呼ぶ?

日々、意味>新 2019.07.26 橋本 司

特産品だったこともあって地元兵庫の田舎には素麺工場がたくさんありました。みなさんご存知「揖保乃糸」です。家と学校が近すぎたために学校の帰り道で見かけるなんてことはなかったけれど、そこここで素麺を伸ばして乾燥させている様子を見ることができました。そんな具合なので、家にはどこかしらからもらった素麺が常にあって、それを当たり前のように「素麺は家にあるもの」と思っていたから、いまだにちょっと「素麺は買わないとない」ということに若干の違和感のようなものを覚えます。

 

知人の家が素麺工場をやっていたりもしたので、伸ばして乾燥させる時の両端部分が言わば端切れとして出てくるから、それを袋に詰めて、もらったりもしました。その端切れのことは「バチ」と呼んでました。なんで、バチなのかと訊くと「三味線をひくのに使う”バチ”に似てるから」らしいけど、もらったバチはただの短い素麺でしかなく、まったくバチらしい形をしていませんでした。

 

ところで、先日徳島のお土産をいただいた中に「ふしめん」というものがありました。袋の面には「半田手延」と書いてあります。裏を見てみると「手延素麺をつくる時に1番力のかかる部分をふしめんといいます」とのこと。「これ、バチじゃないか」と思って調べてみたら地域によって呼び名が違うようで、やっぱり同じみたいです。ただ、形がぜんぜん違う。僕がもらってた、ただ素麺を短くしたようなのじゃなくて、伸ばす際にひっかけてたと思われる角の部分があって、そこが平べったい。なるほど、たしかにこれなら三味線のバチに似てるかもしれない。

昔は不思議に思わなかったけど、くるんっとなってるこの「ほんとの端っこの部分」がないっていうのはおかしいから、僕がもらっってたバチはたぶんここを切り落としてあったんでしょうね。ぜんぜんそのままでよかったのになぁ。

 

ただ、バチに似てる徳島のお土産の方は「ふしめん」って呼んでて、バチらしい部分を切り落としてる兵庫の方がバチって呼び方なのはなんでなんですかねぇ?その謎はちょっと調べたくらいじゃわからなかったけど(産地や各製麺所でもっとこまかくいろいろ違うようです)、稲庭うどんではバチのことを「曲がり切り落とし」または「かんざし」と呼ぶことはわかりました。それを踏まえて見てみると、徳島のふしめんは「ヘアピン」ですね。おもしろいぞ、端っこ文化。

 

あ、あと余談ですけど「ケイドロ」もかなり地域によって呼び方が違うようなんですけど、地元で呼んでた「ペケタンポコタン」略して「ペケポコ」については、検索してもまったく出てこないし、今までに1度も「うちの地元もそうだったよ」と同意を得られたことがありません。だんだん自分の記憶違いなんじゃないかと怖くなってきたので、今度地元帰ったら誰かに訊いてみよう。そうしよう。