赤いバケツと景観の意識

日々、意味>新 2019.10.18 加藤 孝司

みなさん、先日の列島を襲った台風では大丈夫だったでしょうか?被害に合われた方には心よりお見舞い申し上げます。日を追うごとに報道などで大変な状況であることを知り心痛めています。一日も早い復興と普段通りの日常が戻ることを祈念いたします。

僕が暮らす関東に台風が直撃した日。仕事の関係で京都にいました。こちらでは台風の雨風の影響も少なく、ニュースやSNSなどで刻々と伝わってくる情報に、関東に残してきた家族のことが心配でたまりませんでした。

台風や地震など、天災はいつか必ずやってきます。その日に備えて準備をすることにし過ぎはないことを今回でもあらためて思い知らされたわけですが、実際自分がどれだけ備えが出来ているかということは、まったくもって自信がありません。

防災ということに関して、仕事の合間に京都の町を歩いていて気づいたことをひとつ。

それは古い町並みの家々の前に赤いバケツに並々と水が注がれた防火用水が備蓄されていたこと。裏通りを歩いていると、必ず目にする光景です。京都の町中における景観に関する規制はとても厳しいことで知られています。聞いた話では家を新築する際にエリアによっては、三角の屋根(切妻屋根)や軒庇をつけることが義務付けられ、勾配も規定されているとか。実際に僕の友人が浄土寺あたりに家を建てた際には、現代的な建築にも関わらず、三角の屋根が付けられていて納得したものです。

そんな思いでよくよく町並みを見てみると、マンションの一階にあるコンビニの建物にも瓦がのった庇がついていたり、有名飲食チェーン店やコインパーキングの看板もモノトーンで統一されています。

さて、この防災用バケツですが、そんな木目調の落ち着いた京都の町並みの中で、不釣り合いなほどとても目立っています。軒先の植木鉢などに混じって置かれていますが、赤はちょっと目立ちすぎなんじゃないかと思ったりします。

ですが、よくよくこの赤いバケツを見ていくと、この色も京都の町並みの中にあると、日本の伝統色である朱色に見えてくるから不思議です。五条あたりの町並みの中で見ると、どこか艶っぽさも感じてきます。そして朱色は鳥居などでも分かるように、魔除けとしても使われる色。また高貴な色として知られています。京の人たちは家の前にこのバケツを置くことで、防火に備えるとともに魔除けとしての効果も知っているのではないだろうか?そんなことを考えながら、台風がかすめ過ぎた京都の町をフラフラと歩いたのでした。

おすすめキーワード