中村軒に1回行ってみてほしい

日々、意味>新 2019.11.22 橋本 司

京都の桂に中村軒という和菓子屋さんがあって、おすすめしてもらっていたけど自分の店と定休日がかぶってることもあってなかなか伺えずにいました。やっと先日おじゃましてきたんですけど、いやぁ、よかった。
奥に座敷があって、店頭の和菓子や茶店用のメニューをゆっくりいただけるようになっていて、その座敷がとてもいい。見回すと「頭上にご注意ください」「すべて税込表示になっています」や「栗ぜんざい ◯◯円」などの注意書きや季節のメニューなどが貼ってあります。それによってお店とお客との間に一線引かれていることを意識させ、くつろげるけど程よく背筋が伸びる。モダンな和室だとまた話は変わってくるのかもしれないけど、和室には、情報をスマートに見せるための下手なデザインなんかはない方がいい気がしました。
座って寛いでいると、時間の流れがとてもゆっくりに感じる。田舎育ちの人にしか伝わらないだろうけど、実家にいるあの感じです。でも、和室じゃなかったらまた感じ方が違うのかもしれませんね。この「実家感」はいずれもうちょっとちゃんと言葉にしたい感覚のひとつです。
「感じのいい人」や「いい湯加減」のような、自分にとっての「ちょうどよさ」を人に説明するのはなかなかに難しい。それはたぶん、往往にして「ちょうどよさ」は見えにくい小さな気遣いや思いやりの集積の上に成り立ってるからじゃないかなと思っています。
中村軒には、自分にとってちょうどいいおいしさと気持ち良さがありました(ちょっとおこがましいですが)。「よかったら1回行ってみて」以上に説明できるようになりたい気持ちもありつつ、やさしい甘さのお菓子を口にふくみながら庭を眺めては「でもやっぱり体験しないと伝わらない良さだよなぁ」と思うのでした。

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