寄席に学ぶ

日々、意味>新 2017.06.16 橋本 司

今回からこのDaily「日々、意味>新」に参加させていただくことになりましたLADERの橋本です。よろしくお願いいたします。LADER(ラダー)っていうのは僕が京都でやっている日用品店なんですけど、今ちょうど移転準備中ということもあるのでまたおいおい紹介させてもらいますね。

 

ちょっと前の話になるんですけど、去年の11月に前々から興味があった寄席に初めて行きました。しかも、立川志の輔!最初にこれを観ちゃったら後どうしようって気もしますけど、とにかくそれがすごくよかったんです。

 

志の輔さんは出てきただけでもうおもしろかった。ちょっと背中を丸めて力の抜けた感じで、しゃがれた声でボソボソッと話しはじめる。それなのに、声を張ってキビキビ話してた前座の人より聞き取りやすかったんです。不思議なもんですねぇ。これも話芸のうちのひとつなんですかね?

 

もちろん噺の内容もおもしろくて、最後きれいに伏線を回収して鮮やかに終わりました。ただ、その見事さに対して終わった後があまりにあっさりだった。「お粗末さまでした」と言わんばかりに、まだオチの語尾を言い終わらないくらいでお辞儀をして、拍手の中、志の輔さんはそそくさと舞台から捌けていきました。その去り際の良さもとてもよかった。粋だったなぁ。

 

よく出来た噺は、構成・言葉のセレクト・表現の仕方がよくデザインされてるって言い方もできると思います。目的(笑い)に対して、素材(話)と方法(構成・言葉選び・間の取り方・扇子の使い方などなど)を吟味して工夫する。そういう意味では、一見ぜんぜん違うことに見える落語もデザインも料理も同じだと言えます。そのあたりの表層の違いをバールのようなもので壊してしまえば、いろんなことを同じ目線で考えたり楽しんだりできる気がしますね。