音楽を奏でる樹脂のかたまり

日々、意味>新 2017.08.26 加藤 孝司

フィルムカメラ、レコード、カセットテープ、ラジカセなど、高度経済成長時代やバブル時代に流行った、あるいは憧れの品であり、今の時代からみれば、文字通りアナログなものが今、この時代にその価値や、魅力が見直されていることは最近よくいわれている。
先日訪れた都内の百貨店の催事場でも、たくさんのラジカセとカセットテープが並んでいた。そのどれもがまるで新製品であるかのようにピカピカであった。20~30年以上前のものが、よくここまで良いコンディションで残っているものだと思ったが、これらが店頭に並ぶためには、卓越したエンジニアのラジカセ愛が不可欠であることはいうまでもない。

店頭には文字通り復刻された新製品のアナログ式のラジカセやカセットテープも並んでいた。

iPhoneやiPodなどで音楽を聞くときのパネルやスクリーンの上に指先をすべらせ操作するデジタルの質感。

かたや腕全体を使い、樹脂製の大きなボタンをググっと押し込み、部品と電子が連動してカセットテープを再生する時の感覚は、同じ音楽を聴くことであってもまったく異なるように思う。夜の暗がりの中でも、無骨なつくりの再生ボタンと停止ボタンは手探りひとつで分かるものだった。

幾多の夢をみさせてくれたものたちが再び輝きを取り戻す様はなんともいいものだと思う。

加藤 孝司
加藤 孝司
加藤孝司/かとう たかし
デザインジャーナリスト。東京は浅草生まれ。デザイン、クラフト、アートなどを横断的に探求、執筆。雑誌やウェブなどへの寄稿をはじめ、2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考中。休日は愛猫ジャスパーと過ごすことを楽しみとしている。

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