雪景色と音楽と六花亭

日々、意味>新 2018.07.25 水島 七恵

根室、洞爺湖、札幌と、ここ数年、ずっと北海道にご縁があります。とても嬉しいです、北海道に惹かれているから。

 

どうして惹かれているのか。

 

自然が豊かでご飯が美味しいといった、きっと誰もが共感できるであろう普遍的な理由ももちろんあるけれど、より個人的なことでいうと、北海道の雪景色とこの土地が育んだ音楽に親しみを持っていたからだと思う。

私の地元・新潟もまた冬は雪で覆われていた。鉛色の空の下、しんしんと積もり続ける雪が、周囲の音を吸収していく。いつしか静寂のなか、自分の吐く息の音しか聞こえなくなった。

そういう風景を何度も繰り返し体感してきた私は、勝手ながら北海道の風景もまた、新潟と同じ一線上にあるのではないかと、そういう気分がいつも拭い去れずにいた。そして意図的ではないにしてもその雪の風景から生まれた音楽があると思っている。

そのひとつが札幌の音楽レーベルstraight up records。このレーベル所属のbuffrerinsというバンドの音楽が大好きで、学生時代本当によく聴いていたけれど、聴きながらなぜか新潟の鉛色の空を感じた。冬。閉塞感を持ちながらも、心には深い情熱を持っている、そんな街の風景と人の営みを。感じながら、ああ北海道の人たちもきっと、とってもエモーショナルな人たちが多いんだろうなと思った。

 

そんな私もずいぶん大人になって、今ではもうひとつ、北海道といえば、の心の拠り所を見つけたような気がする。創業1933年、マルセイバターサンドが有名な、北海道を代表する和洋菓子メーカーの六花亭だ。

 

「チョコレートは黒か茶色しかできないのか?」

 

そんな問いから始まったという、六花亭のお菓子作り。今、私は札幌に行けば必ず六花亭 札幌本店でお茶をして手土産を買う。仕事の合間のひとときの安らぎは、六花亭から始まるのだ。先日、そんな六花亭が運営する「六花文庫」に初めて行ってみた。地下鉄真駒内駅から徒歩10分と少し、住宅街のなかにひっそり佇む「六花文庫」は、食をテーマにした本8,000冊を蔵書(蔵書は館内での閲覧のみ)している図書館だ。

 

ツタにおおわれた美しい外観をしばし眺めた後、少し緊張しながら扉を開けてすぐに、ここにいつでも通えるご近所さんが羨ましくなった。六花亭は、お菓子を通して文化を育んでいる。そう実感できる空間だった。そしてそんな六花亭を支えてきた北海道の歴史と自然、人の営みにますます敬意を表するような気持ちで、私はしばらくの間、様々な本を熟読した。おいしいコーヒーを飲みながら。