つげはつげでも

日々、意味>新 2017.09.14 橋本 司

「櫛の良し悪しってなんなんだろう?」と4年前に友人の美容師に櫛を買うなら何がいいか訊いてみた。いくつか要素を挙げてもらって、静電気が発生しないし「つげ(木の種類)」のが良んじゃないかと教えてもらい、iPhoneのメモに「くし つげ」とだけメモをした。それから1年が経った頃、京都伊勢丹でやってた九州物産展で「つげ」の櫛を見つけました。

 

どれどれと眺めていると、やり手な感じの売り場のおばちゃんが話しかけてくれた。「つげ」の櫛をおすすめされて見に来たことを伝えると「つげはつげでも『さつまつげ』と書いてあるのを選ぶといい」こと、「『ほんつげ』と書いてあるものは響きはいいけど、海外の質の良くないつげを使っている場合がある」ことを教えてくれました。

 

「すべて海外製のパーツを日本で組み立てたから「made in JAPAN」と謳えるんです」と嬉々として説明してきた、いつかの家電メーカーさんの顔をチラッと思い出しつつ「さつまつげ」と書かれた櫛を買った。

 

櫛自体も付属の皮のカバーも別段パッとしないし、使用感も特別どうというのは正直実感できませんでした。ただ、今までに買った櫛は、ふいにどこかでなくしたり、なんとなく使わなくなったりしてたけど、この櫛は3年経った今もどこかが痛んだり欠けたりすることなく、いつも鞄の中に入っています。

 

何がいいってわけじゃないながらも、今日も雑に鞄に放り込まれてる様子を見て、悪くないなぁと思う。そして、今のところ他に櫛が欲しくなることもない。こういう気に入り方もあるのかなぁと、これを書くのに淹れたままのぬるくなったコーヒーを飲みながら、ぼんやり思うのでした。