心をなめらかに平らにしてくれるもの

日々、意味>新 2017.12.18 加藤 孝司

鳥のオブジェは置物の中でも、ついつい集まってしまうもののひとつ。以前、結婚の挨拶に訪れた広島の厳島神社で父に買ってもらった張り子の鳥の置物は、インタヴューしたオランダ人デザイナー、ヘラ・ヨンゲリウスのもとに飛び立っていった。のちに発表された彼女の作品集の中にその姿を見たのはそれから数年後。彼女のデスクの上にその居場所を見つけたようだった。そして今、僕の家にある鳥のオブジェは、フランス人デザイナー、ロナン&エルワン・ブルレックの「ロワゾーL’Oiseau」である。どこかの木の枝か、岩の上か、羽根を休める鳥をモチーフにデザインされたというこの鳥は、かの北欧の地の民話に登場しそうな、物言わぬ穏やかな佇まいが美しい。後頭部から首、背中へのなんとも安定感のあるラインは、「箱座り」した猫の姿のようでもある。素材は無塗装のメープル。精巧に研磨されたなめらか木肌の質感は、視覚だけでなく疲れた触覚をも癒やしてくれる。家具やインテリアのデザインにおいても、フランスらしい詩的なムードを漂わせることを得意とするブルレック兄弟だけに、都会の小さな部屋の中にいてもこれをみているだけで、北欧のどこかの国の森の中にある水の澄んだ湖の湖畔に連れていってくれる。椅子や照明の座ることや空間を明かるく照らすといった機能以上に、心や感情をなめらかに平らにしてくれる力が、この小さな鳥のオブジェにはあるように、これを眺めながら日々僕は感じている。

 

ロナン&エルワン・ブルレックの「ロワゾーLOiseau」(vitra)

 

 

加藤 孝司
加藤 孝司
加藤孝司/かとう たかし
デザインジャーナリスト。東京は浅草生まれ。デザイン、クラフト、アートなどを横断的に探求、執筆。雑誌やウェブなどへの寄稿をはじめ、2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考中。休日は愛猫ジャスパーと過ごすことを楽しみとしている。

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