マハラムの色と素材の実験から生まれたマグカップ
前々から気になっていたマグカップを手に入れた。オランダのデザイナー、ショルテン&バーイングスがデザインしたマグカップだ。初めてみたのは、昨年の秋に彼らのエキシビションが行われていた丸の内のハーマンミラーストアだった。ソリッドなかたちのカップに細い線でグリッド柄が描かれたマグカップは、「色」のリサーチを通じて、色について知り尽くした彼らならではのその淡い色合いもあって、実に彼ららしいテイストに仕上がっていた。ショルテン&バーイングスといえば、オランダの生活道具のフォルムの伝統を受け継ぎ、それをコンテンポラリーに解釈しながら、蛍光色といった現代的なカラーを施した家具やテーブルウェアなどの作品が頭に浮かぶ。
このマグカップはテキスタイルブランド「マハラム」が日本の陶磁器ブランド「1616 / arita japan」とコラボし陶磁器の産地、有田でつくったもの。近年有田焼は国内外のデザイナーと共同してつくった「2016 /」 の取り組みで注目されるが、ショルテン&バーイングスと日本の産地との取り組みは、僕が記憶している限りでは1616/ arita japanから始まったように思う。先の16名のデザイナーが参加した2016/ においてもは、日本のデザイナーでディレクターの柳原照弘とともにディレクションを務めている。
ステファン・ショルテンとキャロル・バーイングスの夫婦デザイナーである彼らとの個人的な関わりは、2010年に代官山で行われたテンポラリーなホテルのプロジェクト「LLOVE」でご一緒したのと(その時彼らはホテルの一室をデザイン、僕は一階の本屋を友人と協働で運営した。三枚目の写真は彼らがデザインした部屋でその時僕が撮ったポートレート)、その翌年に来日した際のインタヴューだった。
このマグカップは、1616年に日本で初めて磁器をつくった産地である有田でつくられている。歴史ある産品でありながら、青白い地肌の硬質な手触りは実に現代的だ。複数のパターンで構成された線柄は、彼らがマハラム社で手がけたテキスタイル「グリッド」に由来しているという。マハラム社は1902年にニューヨークに創業したテキスタイルブランド。このマグカップにはテキスタイルの柄をマグカップに置き換えるという大胆な手法が用いられているが、とにかく品がよく仕上げられていて感心する。フォルムもショルテン&バーイングスらしい洗練されたシルエットになっている。これも長年の有田との協働により、その土や釉薬を知り尽くした彼らならではの最適なマッチングだからこそなしえた造型だろう。
Maharam 1616/ S&B ハーマンミラーストアで ¥5,400(税込)