銀河という佐内正史さんの写真集

日々、意味>新 2018.05.06 加藤 孝司

写真はいつでも僕の興味の対象だ。とくに雑誌カルチャーに影響を受けていた頃、90年代やゼロ年代に活躍していた写真家の作品は今でもことあるごとに振り返ってみたりしている。その頃に雑誌などを舞台に活躍していた写真家は今も第一線で活躍している人も多く、年齢も同年代ということもあり、働きざかりの自分にとっても大きく勇気づけられることもある。
そんな写真家の一人である佐内正史さんの新作写真集「銀河」が先日リリースされた。佐内さんは雑誌カルチャー全盛期には「リラックス」という媒体などで作品を発表したり、近年では広告などの仕事をしつつ「対照」という自身の作品を発表するレーベルを立ち上げ、精力的に問題作をリリースしているようだ。
「銀河」は判型のそれほど大きくない体裁に、断ち落としで作品が印刷されている。ずっしりとした重さと厚み、本をひらくと背表紙ヒビが入る味わい深い装丁も相まって、がっつり読み込みたくなる作品集だ。
収録されているのは、おそらく撮影年も異なるさまざまな作品。人物のポートレート、都市や街の何気ない風景、食べ物など。そのどれもが佐内ワールドというもので、望遠系のレンズで撮られた作品には生々しさがあり、原色、原色で、生きる活力にあふれている。

写真はその時代と寄り添いながら、足早に通り過ぎる過去とも同時に寄り添う。写真は今を化石化するとはかの大写真家森山大道の言葉だが、佐内さんの写真はふと思い出して、その作品集のページをめくると、遠くの方でキラ星のように輝いているようにみえる。「銀河」という新作のタイトルをみて、あらためてそんなことを考えた。

 

対照 第14弾写真集  佐内正史「銀河」  3,500円(税込)