アルミン・リンケが撮るアアルト建築

日々、意味>新 2018.10.31 水島 七恵

フィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトのデザインを、葉山にある神奈川県立近代美術館の環境で観れたことが本当に良かったと思う。同館の館長である水沢館長の言葉をお借りするなら、「合理的な規格化を拒むものが宿っている」のがまさにアアルトの建築だと体感できる、見応えのある展示だった。
なかでも私が惹かれたのは、ドイツの写真家、アルミン・リンケが展覧会のために撮りおろした、アアルト建築の写真群だ。リンケの視点は、造形のみに限らず、その造形のあいだに流れている風や光、人の呼吸さえも流れを壊さず、澱ませず、丁寧に捉えているように思えた。私はリンケの写真を通して、まるでアアルト建築に直接触れているような、有機的な時間を過ごすことができた。

たとえ展示会場から離れても、その作品は自分次第で体験し続けることができるのが、アートのよいところ。その手助けとなるものが私の場合は図録であったりするけれど、本展の図録(写真上)の感触がとてもいい。これから図録を手にしながら、ゆっくりアアルトへの想いを熟成させていきたいと思っている。


ちなみに昨年、ポルトガルとスペインを巡っていっそう敬愛する気持ちが高まっているポルトガルの建築家、アルヴァロ・シザもまた、アアルトからの影響を受けています。シザの建築めぐりの記事は、このスペシャルでも書かせていただいているので、もしご縁があればのぞいてみてください。