お茶の文化

日々、意味>新 2016.10.20 水島 七恵

台湾は台北にて。

ローカルレストランらしいムードに惹き付けられてお店のドアを開けると、先客がいた。私はその姿に一瞬で釘付けになる。先客はとうもろこしを食べていたのだが、わしわしとかぶりつくその姿は、本当に野性味に溢れていたのだから。そんな食べ方をしていたら、歯にコーンがたくさん詰まってたまらないのでは…?と思ったけれど、本人からしたら随分と余計なお世話かもしれない。

「Excuse me」。

気持ちを切り替えて、注文をしようと私は声を張ってみると、その先客が立ち上がって私のもとにやって来た。

「What can I get you?」

!? !? まさかの「先客」は、お店の「店員」だった。私という客が自分の店に入って来ようとも、まったく動じずそれもわしわしととうもろこしを食べ続ける店員に出会ったのは、人生で生まれて初めて。
動揺しつつも、なんとか注文を済ませる私。「OK!」と笑顔を送るその店員。
台湾人のみなさまは、基本的にこのようにどっしりと、そして些細なことでは動じない方が多い。その印象を台北の代表的なお茶と生活工芸のギャラリー、小慢のオーナーの謝小曼さんに話をしてみると、『それは台湾にはお茶の文化があるからよ』と、小曼さんは答えた。私はそんな小曼さんの一言に、清々しい風を感じながら、心から腑に落ちた。
 そして文化とは、つくづく即席では生まれないものなんだよなあと、ひとりしみじみと、実感している今日この頃です。
水島 七恵
水島 七恵
編集者。新潟生まれ。人の営みから生まれる文化全般を思考領域としながら、雑誌やウェブメディアを中心に、企画とディレクション、執筆を行う。最近の仕事に「TOKYO PAPER for Culture」(vol.01〜vol.16)の編集ディレクションと執筆、雑誌「リンネル」(毎月20日発売)でのシネマレビュー執筆などがある。自分の原点は、音楽。最近目覚めたことは、筋トレ。私にとって編集とは世界の見かたを増やす手段だと思っています。

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