セラフィーヌという女

日々、意味>新 2017.11.05 加藤 孝司

デザイナー、野本哲平くんの新作は映画にインスピレーションを得て作成された「Seraphine」というタイトルのZINE。その映画とは20世紀初頭に実在した画家をテーマにした「セラフィーヌの庭」という2008年制作のフランス映画。
そして、もうひとつのインスピレーションとなったのが、野本くんが最近手がけたCinecaのインテリア。空間に穿った6つの窓のようなウォールシェルフは、Cinecaの土谷さんがつくる菓子を、それぞれのお菓子がもつ世界観を住む世界を分けるようにひとつずつ陳列する什器だ。それは自らがつくる菓子を断絶させるような行為を可視化している。その断絶はある種「切断」とも密接に関係している。なにもないところからつくることで、切り離すこと。Cinecaのお菓子にあっては、なにもないところから、映画をインスピレーションにかたちを生み出すことでもある。建築家の磯崎新も自身の建築思想に「切断」という概念を用いたが、そこでも重要となったのが、物理的な切断の前にあるなにもないスケルトンな状態だったという。

ある種がらんどうな空間に窓のかたちをした空洞を穿つことで、ここには二重の意味での空洞が存在している。

そんな特異な空間であるCinecaのアトリエショップ「四月」という空間がもつ意味を、この「Seraphine」というZINEは補完するものなのかもしれない。

 

 

BOOK GUIDE:

NOMOTO TEPPEI <Seraphine> . office of Teppei Nomoto, edition 12 copies

加藤 孝司
加藤 孝司
加藤孝司/かとう たかし
デザインジャーナリスト。東京は浅草生まれ。デザイン、クラフト、アートなどを横断的に探求、執筆。雑誌やウェブなどへの寄稿をはじめ、2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考中。休日は愛猫ジャスパーと過ごすことを楽しみとしている。

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