シンプルの本質

日々、意味>新 2018.06.20 水島 七恵

新潟へ。

 

地元ということもあり、滞在中は実家のある長岡を拠点にあれこれ移動をしていたのですが、空いた時間に新潟県立近代美術館に足を運びました。企画展、コレクション展、共催展と3部構成で展開されている同館。うれしいことに、私が足を運んだ時期の展示内容はどれも興味のあるものばかりで、時間いっぱい堪能しました。そんななかでも共催展として展示されていた「第20回 亀倉雄策賞受賞記念 中村至男展2018」を鑑賞できたことが良かった。 中村さんの、デザインを通して垣間見る世界に対する眼差しが好きで、いつも多くの気づきをもらっているにもかかわらず、銀座クリエイションギャラリーG8で一足先に行われていた同展に行けていなかったからです。(中村さんとは面識はありません、ただ一方的なファンです。。)

 

ちなみに「亀倉雄策賞受賞記念」とは、1964年東京オリンピックのポスターでその名も広く知られている、日本のグラフィックデザイナーの巨匠、故・亀倉雄策をルーツとした賞です。公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が運営するこの「亀倉雄策賞受賞記念」は、グラフィックデザイン界の発展に寄与することを目的に、毎年、年鑑『Graphic Design in Japan』出品作品の中から、最も優れた作品とその制作者に対して贈られています。

ところでこの亀倉雄策。こうして呼び捨てしてしまえるほど、私にとって亀倉雄策は遥か遠い偉大なる巨匠ですが、それでもひとつだけ接点があります。それは亀倉雄策もまた、新潟出身なのです。唯一の接点が地元が一緒というのは、なんだかとっても嬉しい、誇らしい。そしてそんな「亀倉雄策賞」を中村さんが受賞されたということで、個人的には大納得しながら、さらにこの地元で作品を鑑賞できることに深い高揚感を覚えました。

 

「第20回 亀倉雄策賞受賞記念 中村至男展2018」。本題の展示内容のなかでも、私自身は中村さんが「シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン展」にて出展されたブルーナへのオマージュ作品に、特に釘付けになりました。オランダ人絵本作家、ディック・ブルーナと言えば、絵本「ミッフィー」(うさこちゃん)シリーズ。あの愛らしいミッフィーを知らない人は、きっといないと思うのですが、その「知らない人は、きっといない」というところまで極めたディック・ブルーナの表現者としての本質を、すごさを、中村さんらしい視点で「極めた」作品が数点、中村至男展2018でも展示されていたのです。

 

上記の写真はまさにその作品のひとつです。

たとえ柱の陰に体の半分以上が隠れようとも、ミッフィーだとわかってしまうアイデンティティの確固たる強度たるや。
「シンプルとは何か?」。
その問いに対する中村さんの回答に、私はしびれました。そして改めてデザインとは翻訳機能を持つものだと、実感したのでした。つまりはディック・ブルーナの魅力は、中村さんのグラフィックを通して新たに語られたのだと。

 

デザインって、楽しいですね。

 

「第20回 亀倉雄策賞受賞記念 中村至男展2018」
〜2018年07月01日(日) 会場:新潟県立近代美術館