新しい銀座、あたらしいGINZA

日々、意味>新 2018.05.15 加藤 孝司

伝統のある老舗が軒を連ね、ショッピングをする人たちや海外からの観光客で日々賑わう街、銀座、という話ではありません。マガジンハウスの雑誌「GINZA」が5月発売の6月号から大幅にリニューアルした。

GINZAといえば、1997年3月創刊の雑誌で海外のラグジュアリーブランドを中心に、その名前の通り都市生活を楽しむ大人の女性をターゲットにした雑誌として不動の人気を誇る。創刊号の表紙には、鈴木京香、エルメス、アントニオ・バンデラスの文字がまぶしい。雑誌創刊当時の銀座(という街)は、いまと比べて海外からの観光客も少なく、そしてファストファッションのお店もない、「イエナ洋書店」がまだあった大人の街。銀ブラという言葉もまだ健在だった。渋谷、新宿、六本木といった他の繁華街とも異なり、美しい通り、落ち着いた街なみは、東京に生まれた僕にとっても憧れの街だった。
さて雑誌GINZA創刊の経緯は分からないが、そんな大人の街を背景に、雑誌名からも憧れを喚起される読者も多かったと想像する。そして20年以上の時が流れ、今や銀座の街も単に大人の街というイメージだけではなく、消費の街のひとつになってしまった。そんな時代における雑誌GINZAの役割も変わっただろう。そして、今回の大幅な誌面リニューアルである。
まず、表紙からして違う。まったく別の雑誌のようにも見える潔い変化だ。前号までのGINZAも写真家とのコラボや、ハイファッションだけでなくカルチャーもカバーする誌面で好きだったが、新生GINZAは表紙のモデルさんのスタイリングからして、どこかGINZA創刊時を飛び越え、70年代の西海岸の女性を思わせるいでたちが新鮮だ。表紙からは馴染みのある大きなGのロゴマークも消え、表紙左下に控えめに記されている。そのGの文字の中にあったGINZAの文字だけが、これも控え目に左上の方に配置され、これがまごうことなくGINZAであることを示している。そして今号のタイトルはOK,Ladies!、ガールではなくレディースというあたりに新しいGINZAのアティチュードがありそうな気もする。
ページをめくると大きめの写真、文字さえもがグラフィックの一要素としてレイアウトされている。
新編集長は河田沙弥さん、アートディレクターは米山菜津子さん。米山さんは僕の知人でもある写真家石田真澄さん(今号imishinのSPECIALにも登場)や、トヤマタクロウさんの作品集のデザインも手がけているグラフィックデザイナー/アートディレクター。出版レーベルYYY PRESSを主宰し『GATEWAY』という先鋭的な刊行物も手がける。新GINZAでも写真家の起用が冴えているのは彼女の見立てだろうか(石田真澄さん、Elena Tutatchikovaさんも参加)。
とにかくデザインも写真もいい、雑誌自体がひとつのアートになっている。カバーするのはファッションに加え、デザイン、アート、カルチャー、食など多岐にわたっているのはちろん、時代を反映させてか、これまで以上にその比重がフラットになっているように思う。毎月800円で手に入る幸福。オリーブ、クウネル、リラックス、huge、アンドプレミアム、iD、FACE、CRASH、ELLE、PURPLE、here and there、これまで国内外の数々の女性誌、カルチャー誌を見てきたが、久々にページをめくるたびにワクワクさせてくれる雑誌に出合った。
GINZA 800円(マガジンハウス刊)

 

 


 

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