092014

Special #4

料理と創作

イラストレーター 黒田 潔 インタビュー

Interview & Text : 水島 七恵 Photography : 井上 美野

「作る」という行為を支えるもの。それはきっと人それぞれにある。
東京を拠点にイラストレーターとして活躍する黒田潔さんの創作活動を支えているもののひとつには、料理という行為があった。
料理という名の何気ない日常が、その過ごし方が、自身の作品に活かされていくということ。
その一片を垣間みたいと、ある日の昼下がり、黒田さんの仕事場に伺った。

絵も料理も、形の美しさ、
面白さに惹かれて

仕事場で料理を作り始めたきっかけを教えてください。

絵を描くという仕事柄、1日中仕事場に缶詰のことが結構多いんです。最初、その間に取る食事も出来合いのものが多かったんですけど、食べているうちにちょっと寂しいというか、仕事の気分転換にならないなあと思い始めて。だったらこの仕事場にはちょうどキッチンがあるし、自分で料理を作った方が絶対にいいなと思って、それで作り始めました。

料理をすることで、変化したことはありますか?

まず、気分転換にはすごくなっていますね。絵は、描いても描いても納得のいかないときがあるんですけど、料理というものは、作り始めれば終わりがある。それを毎日繰り返していくことで、味に安定感も生まれていくし、本当に無駄がない料理ができるようになるので、純粋に楽しいですよね。あと料理を作ることで、アシスタントと仕事以外の話ができる時間を持てたことが良かったですね。同じものを一緒に食べながら会話をする。こういう時間が僕とアシスタントのあいだを繋いでくれているような気がします。

今日テーブルに並んだ料理はカレーとサラダでした。

この間、下田(静岡)に遊びに行ったときに、現地で朝市をやっていたんです。そこで形や色のきれいなキノコやトマトがたくさん売られていて。やっぱりキレイな食材を食べたいなっていうのはあるのかもしれません。今日はそこで買った野菜を使って、大好きなカレーとサラダを作りました。カレーはいつもの調合を変えたら、ちょっと漢方系の味になっています(笑)。体調管理のことも考えて野菜は多めに取るようにしているので、サラダもよく作りますね。下田に美味しそうなイタリアントマトが売っていたので、それをたくさん入れました。今回は下田でしたけど、普段からちょっと遠出したときには、よく現地で食材を大量に買ってきて、それで料理を作るようにしています。

料理のどんなところが好きですか?

僕は野菜を形の面白い立体物と捉えているところがあって、その立体物をどの方向から包丁を入れようかな?と考えるのがとにかく好きです(笑)。野菜を切る行為が好きなんですね。あとは、自分の食べたいものを忠実に食べようと心がけているのと、季節の旬な食材を食すことを大切にしています。食べることは生きること。だからその行為を絶対に雑にはしたくないなっていつも思っています。

料理という行為が黒田さんの創作活動に活かされていることはありますか? 最近の個展『線』(日時:2014年8月23日〜9月23日 場所:手と花)を拝見しましたが、食材も作品のひとつのモチーフになっていましたね。

そうですね『線』では、自分の身の回りのもの、自分が今興味のあるものを描いたんです。そういったなかで、今回はいくつか野菜も描きました。ネギやトマト、タイ米などを描きましたけど、形の面白さを抽出したいと思って描いていたので、野菜というよりもやっぱり立体物を描いたという意識の方が強いですね。

黒田さんの作品は着色されていないことがひとつの特徴でもありますが、ご自身のなかでそれはどのように捉えていますか?

線に集中するために色を入れないっていう感覚ですね。線をきれいに面白く、を突き詰めていくと色が余計なものに見えてくるので、個人的な創作活動はそういうスタイルを取っています。一方で仕事ではカラフルなもの、季節感や流行色も取り入れるようにしています。あと、今お話しながら思ったんですけど、食欲って絶対に色から湧いてきませんか?「美味しそうな色だな」とか、「この色の野菜を食べたい」って、絶対に人間の本能のなかにあると思うので、そういった意味で料理するときには、色をすごく意識して食材を選んでいるかもしれません。創作活動とは真逆で、僕は料理には色を求めていますね。

今後チャレンジしたい料理はありますか?

保存食を極めてみたいですね。野菜が層になっていて保存瓶に詰まっている感じがすごくきれいですし、作る時間がないときにささっと出して食べられるのもいいなあと。今度作ってみたいと思います。

黒田 潔

1975年東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、東京を拠点にイラストレーター、アートディレクターとして活動。その傍らで数多くのアートワークを発表している。作品集にアラスカの森の情景を描いた作品集『森へ』(ピエ・ブックス)、作家の古川日出男との共作「舗装道路の消えた世界」(河出書房新社)がある。大阪成蹊大学客員教授。

水島 七恵
水島 七恵
編集者。新潟生まれ。人の営みから生まれる文化全般を思考領域としながら、雑誌やウェブメディアを中心に、企画とディレクション、執筆を行う。最近の仕事に「TOKYO PAPER for Culture」(vol.01〜vol.16)の編集ディレクションと執筆、雑誌「リンネル」(毎月20日発売)でのシネマレビュー執筆などがある。自分の原点は、音楽。最近目覚めたことは、筋トレ。私にとって編集とは世界の見かたを増やす手段だと思っています。

Related

おすすめキーワード