112018

Special #32

アイデアが浮かぶとき vol.3
原川慎一郎氏(料理人・the Blind Donkey共同オーナー)インタビュー

作り手の思いと素材と向き合い料理をする

Photography & Text加藤 孝司

目黒の人気レストランBEARDのオーナーシェフだった原川慎一郎さんと、

カリフォルニアのオーガニックレストランの先がけとして知られるシェパニーズで

総料理長をつとめたジェローム・ワーグさんの二人が昨年12月に立ち上げると、

瞬く間に注目を集めた自然な食を提供するレストラン、the Blind Donkey。

 

地産地消、オーガニックにフォーカスし、素材の持ち味を生かしたシンプルな調理法で作られる料理は、

その味はもちろん、料理も作り手次第でひとつの作品にもなりうることを証明するかのようだ。

 

生産者との繋がりを大切にしながら、食本来のあり方に立ち返るまっとうな姿勢で、

自然な食のフィールド作りに取り組む原川慎一郎さんに話を聞いた。

出来るだけシンプルに調理をするという希有なこと

he Blind Donkeyの料理のコンセプトを教えてください。

レストランとして食を通して自然に歩み寄れたらいいなあという思いがあって料理を作っています。それをするにあたり僕らにとって自然に一番近い人というのが日本の農家さんや漁師さん、一次産業に関わる方たちです。

 

そのような自然と向き合いお仕事をされている方たちに食べ物を分けていただいてレストランをするというのが僕らのコンセプトです。

素材を選ぶというよりも産地との出会いが大きかったりするんですか?

そうですね。その上で素材、美味しさが重要な要素になります。それと誰がどのような思いで作っているのかということが、それに加えて大事だと思っています。

そういった意味では料理家とはどのような存在だと原川さんはお考えですか?生産者の皆さんと僕らとの繋ぎ手だとは思うのですが。

出来るだけシンプルに食やその作り手の思い、作られる環境をダイレクトに感じてもらえるような形で届けることですかね。

 

材の持ち味を最大限生かすには、調理の仕方も重要になってきますね。

ローストをして切る、適度に茹でてあるだけ、そいうことが多いです。その中でもローストの仕方、茹で方が重要になってくることは言うまでもありません。素材が出来るだけ分かるような表現の仕方、あまり「プロセス」しすぎないというか。そんなことを大事に料理をしています。

 



それは原川さんとジェロームさんの料理や、オープンキッチンスタイルの店内であることからもしっかり伝わってきます。誰もが出来そうな極めてシンプルな調理法であるにも関わらず、すごく美味しい。

そしてキッチンで働いているスタッフの皆さんも生き生きとしているし、お客さんもこの場所にいる時間をおのおのがしっかり愉しんでいるじゃないですか?お店全体が醸し出す雰囲気というか全体の空気感ががいいなといつも思っています。

やはり、コンセプトはあるとはいえでもレストランなので、お客さまは食事も含めてその時間を楽しみにいらしているので、美味しくて楽しい、居心地がいいということは重要だと考えています。

 

ワインとの楽しみについてはいかがですか?

僕らはワインのスペシャリストではありませんが、味や作り方とかが出来る限り、自然と向き合い寄り添うという考え方の生産者さんたちのワインを譲ってもらえるようには心がけていますね。

料理の背景には、生産者さん、料理人、そしてそれを美味しく食べる人の存在が欠かせないと思うのですが、食べるものというよりかは、それを食べる人に対する思いがあるという意味で、食には誰かに向けて作るアートやクラフトと同じように、ひとつのクリエイティブとしての側面もあると思って今回インタビューをお願いした経緯があります。

例えば、生産者さんや自然との関わりと同じように、良い映画をみたり、小説を読んだり、音楽を聴くことが料理にも反映されることもあると思うのですが、原川さんご自身、クリエイティブという視点からみると、料理とはどのような存在だとお考えですか?

そのことに関してはジェロームともよく話すのですが、料理人って言葉としてはアーティストというよりはクラフトマンの方が適切なんじゃないかということです。

 

それと芸術というよりも職人的な仕事かなと思います。もちろんその中にも美意識的な観点での自分なりの思いというのはあるのですが、自分たちが作る料理に対して、いわゆるエゴイスティックな表現、作品のような感覚はないですね。

 


それでもやはり食べる側の人間としては、料理を前にして創造的だなと感じることがあります。例えばジェロームさんや原川さんが作られるものにも、料理の盛りつけもそうですが、味わい、素材やスパイスとの組み合わせ、旬の素材の生かし方などに創造性を感じます。
そういった意味では原川さんがこれまでBEARDというお店やthe Blind Donkeyで提供される料理や空間において、ひらめく瞬間があると思うのですが、原川さんにとってアイデアが生まれる瞬間とはどのような時ですか?

the Blind Donkeyの料理に関してはジェロームが主に担っていますが、彼が応えるべき質問かなとも思うのですが、例えば、美味しいトウモロコシが穫れた、そこに刺激を受けてワクワクして、さて何を作ろうかなという、素材ありきで料理が浮かんでくると彼はいいます。

レストランではコースで料理を出しているので、その一皿一皿に流れやストーリー、起承転結があって、ヘビーなものの次は軽めのものなど、それぞれに味のポイントやアクセントを付けて表現したり考えています。

 

 

 

僕がジェロームといつも話しているのは、素材ありき、ということです。一次産業に携わる方々の思いや、お料理の素材が僕たちに料理のひらめきとアイデアを与えてくれると思っています。

the Blind Donkey

東京都千代田区内神田3-17-4 1F

予約専用番号 050-3184-0529

OPEN:17:00~23:30(レストラン 18:30~)

日・月休

原川慎一郎 / the Blind Donkey シェフ、RichSoil&Co. 代表

 

静岡県生まれ。国内やフランスのいくつかのレストランで修業後2012年に目黒にレストラン「BEARD」をオープン。2017年、「シェ・パニース」元総料理長であったジェローム・ワーグ氏とともに、東京神田にレストラン「the Blind Donkey」をオープン。10月より毎土曜に同店にて新たな取り込みを始める。

 

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