042018
Special #26-1
Eastern 釣りに行こう。- 前編 - VOSTOKが釣りに込めた想い
いにしえから変わらない自然のある本土最東端・北海道根室市とたくさんの人々が行き交う東の都・東京。
ふたつの東を行ったり来たり。それぞれの場所から育まれていくものの出会いから、
これからの新しい暮らしを探っていくイベントEastern vol.02が、昨年に続いて今年もふたつの東で行われました。
vol.02のテーマは、「釣りに行こう」。一見すると間口が狭いとも捉えられがちなこのテーマを、
誰にでもひらかれた体験へと繋げるためにEastern が大切にした心意気とは?
Easternに携わった人たちの声をすくいとりながら、三編(前編・中編・後編)に渡ってこのイベントに迫りました。
*昨年行われたEastern vol.01のレポートはこちらから。
釣りは動物的な感覚をもたらせてくれる遊び
松陰神社前にお店を構えるMERCI BAKEを東京のパートナーに、Eastern vol.01が行われたのが2017年2月。ちょうどその1年後となる2018年2月に、Easternは根室に帰ってきた。Easternを企画するVOSTOK代表の古川広道さんは言う。
「できる限り多くの人たちに楽しんでもらいたい。Easternを知ってもらいたい。そんな思いから昨年のEastern vol.01ではMERCI BAKEに協力をしてもらいました。美味しい食べ物は世代を問わずみんなを幸せにしてくれるから。結果、おかげさまで本当にたくさんの人たちに足を運んでいただきました。その経験を経て、今年のvol.02ではもう一歩踏み込んで、いつもと違う視点から日常の暮らしのことを考えてみたり、新たな気づきを得られるような体験を形にしたいと思ったんです」。
もう一歩踏み込むために。VOSTOKがEastern vol.02に選んだテーマは、「釣り」。一見すると、釣りは間口が狭く感じてしまうテーマかもしれない。釣りの経験がない人、釣りに興味がない人にとっては、特に。けれどEasternが目指した釣りとは、そういった経験や興味のない人たちにこそ接点を見出せる、誰にでもひらかれた体験としての釣りだった。
「人間はマンモスが闊歩していた時代から魚釣りをして食料を確保していたんです。道具の発展とともに漁業という産業が生まれましたが、それでもなお、釣りは特殊な技能や資格を必要としない、誰にでも開かれた体験です。と同時にスマートフォンでなんでも調べられるこの現代社会のなかで、釣りは数少ない動物的な感覚を日常にもたらせてくれる遊びでもあります。一本の糸から見えない魚を釣りあげるには、想像力が必要で、その想像と現実を結びつけていく力が必要です。つまり理性と野性との間を行ったり来たりする釣りは、本当は知っているのに普段忘れている感覚を呼び起こして、感情を豊かにしてくれるんじゃないかと。もちろん、人の狩猟の歴史を省みることもできます。そんな想いからEastern vol.02のテーマは釣りにしたんです」。
生粋の釣り人でもある古川さん。今から7年前、東京から釣りのために初めて訪れたこの根室に、4か月後には移住していた経験を持つ。その決断力の素早さには圧倒されたが、それもまた、古川さん曰く、日々の釣りでの経験が自身の決断力に繋がっていると話す。
「例え自分で経験しなくても、今は他人の作った情報と言う知識だけで判断できてしまう時代です。そういった環境のなかでは自分で選択するという力は知らず知らず失われつつあるんじゃないか。そう感じてしまいます。一方の釣りは自然のサイクル、リズムを感じながら、自分で選択していく遊びです。つまり自分自身が動物であることを自覚させられるんです。なぜなら自分でその状況を読んで、判断して、その環境に適応しないと魚は釣れないから。Eastern vol.02ではその感覚を少しでも皆さんに感じてもらいたい。そんな想いのもと、根室と東京、ふたつの東で活動するたくさんの人に協力を得ながら形にしていきました」。